商品やサービスがヒットするほど模倣リスクが大きくなります。
順調な売上を見せていたのに、あるときから売上が不自然に減少し、模倣品に気づくというパターンをよく聞きます(下イメージ図)。
模倣に関するネット記事を見ていても模倣品の製造行為そのものを予防することは難易度が高いと思います(意識の問題?)。
<ネット記事の一例>
・「シックスパッド」模倣品販売容疑 愛知県警が男逮捕(朝日デジタル)
・大阪府警/Gioの社長を逮捕/衣料品のデザイン模倣で(日本流通産業新聞)
・「マリカー」社を提訴=著作権侵害で-任天堂(時事通信)
一口に“模倣”と言ってもいろいろあります。
どのような模倣が多いのでしょうか?
(出典:特許庁 2015年度模倣被害調査報告書 図1.2‐9)
特許庁の模倣被害調査報告書(上図)によると、
最も紛争が多いのが商標です。
商標は消費者が商品を識別する商品名やマークなどに関する権利です。
そしてこのような商品名やマークの模倣行為を止めさせるためには商標権が必要です。
このように模倣対象に応じた権利がないと模倣リスクの対策はできません。
主ににどのような権利を有しておくべきか以下にまとめました。
模倣対象 | 模倣対策の主な根拠 | 備考 |
技術 | 特許権、実用新案権 | 特許庁への出願が必要 |
デザイン(商品外観) | 意匠権 | 特許庁への出願が必要 |
商品名、マーク(商品を識別するの) | 商標権 | 特許庁への出願が必要 |
著作物(文章、音楽、絵画、プログラムなど) | 著作権 | 著作権は著作物創作と同時に発生(手続き不要) |
製造ノウハウ、顧客情報(営業秘密) | 不正競争防止法 | 不正競争防止法の要件を満たすこと |
模倣リスク対策を行うにはこうした権利を確保しておく必要があります。
取得費用などは以前の記事を参照ください。
製造ノウハウや顧客情報などの営業秘密が不正競争防止法で守られるためには特別の手続きは必要ありませんが、不正競争防止法第2条6項で規定されている要件(下枠)を満たしている必要があります。
<不正競争防止法第2条6項>
(定義)
第二条
6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。 |
法律で定められている要件は
・秘密として管理されていること(秘密管理性)
・生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
・公然と知られていないこと(非公知性)
3つです。
この中で一番問題になり得るのが“秘密管理性”です。
詳細は割愛しますが、文書に「マル秘」と記す、施錠管理する、などの措置が求められます。
いかに模倣を早く察知するか?
模倣は放置するほど売上やブランドイメージへの影響が大きくなります(下イメージ図)。
被害が大きくなる前に何か手を打ちたいところです。
ただ、四六時中担当者が模倣品に目を光らせるということは現実的ではありませんし、それをやったからと言って大きな効果が得られるとも限りません。
参考になる事例がありますので紹介します。
上の写真はヌンチャクのような動きをするスマホケースです。
(株式会社ニットー:http://www.trickcover.com/)
どのような商品かは以下の動画をご覧ください。
国内中小企業で初めてクラウドファンディング(※)を活用して資金調達し、当該商品を開発しました。
※ クラウドファンディングに関する過去記事 ・クラウドファンディングとは ・クラウドファンディングプラットフォーム(購入型) ・クラウドファンディングの流れと留意点 ・ラップフィルムケース(新商品)で見るクラウドファンディングの流れと留意点 ・ラップフィルムケースで見るクラウドファンディングの知財ポイント |
クラウドファンディングなど口コミで商品が認知され、通常のスマホケースよりも高い価格設定にも関わらず売れているヒット品になりました。
当然、模倣品があらわれるのですが、生産地である中国から輸入される直前でこれを止めることができました(意匠権などを根拠に販売代理店に警告状を送ったら、それだけで効き目があったそうです)。
なぜ模倣品をすばやく察知できたのでしょうか?
・社内に専門知識を持った担当者がいたのでしょうか?
・外部調査機関を利用していたのでしょうか?
・たまたま発見できたのでしょうか?
答えは自社商品購入者からの通知です。
購入者に自社商品のファンというレベルにまでなってもらえれば、そうしたファンが情報を運んでくれます。
そうしたファンが多いほど情報網は広くなります。
これは究極の知財対策ではないでしょうか?
該社では商品購入者との接点を設けています。
こうしたネットワークづくりはそれが模倣対策の強力な手段になり得ることがわかります。
今後はこうした顧客との関係性づくりが重要になってくるのではないでしょうか?