特許権をできるだけ広い範囲で取りたい、という場合によく見られるカン違いについて紹介します。
下のようなロボットを開発し、このロボットについて特許をとろうとする場合を例に挙げます(あくまで例えであり、機械の発明だけでなく、化学やIT等の発明でも考え方は同じです)。
特許は技術を保護するものです。
ですので、上のロボットに使われている技術が保護対象になり得ます。
ここでは簡単に考えて、頭部の技術、胸部の技術、腕部の技術・・・という感じで、全体として5つの技術要素からなるものとします(下図)。
このロボットについて(ロボットの技術について)どのように特許を取るべきでしょうか?
全ての技術をひっくるめてとるべき(A+B+C+Ⅾ+E)?
↑これがよく見られるカン違いです。
ここで、頭から足まで全ての技術要素を含んだ権利を取ったらどうなるのか?
この場合、以下のような事態が考えられます。
上記ロボットを上市し、評判が良いとさっそく模倣品がでてくるでしょう。
下のような模倣品がでてきたら特許権侵害を主張できるでしょうか?
(下のロボットは胸部だけが自社技術と異なる技術を用いているとします)
結論から言うと、上の模倣ロボットに対して権利侵害を主張することはできません。
A+B+C+D+E、で権利を取った場合、A~Eまでの全ての技術を含んむものにしか権利が及ばないからです。
上の右のロボットの技術の権利はA+F+C+D+Eであり、A+B+C+D+Eではありません。
すなわち、技術全体として別物、ということになります(均等論、という別の考え方がありますが、ここではこれは考えないものとします)。
このように、様々な技術要素を組み合わせていくほど権利範囲は狭くなってしまいます(その分、権利は取りやすくなると考えることはできますが)。
上はロボットの例ですが、製造方法の発明や化学分野の発明でも同じことです(反応A+反応B+反応C+反応Ⅾ+反応E、という感じで)。
では、模倣品に備えた広い権利とはどのような権利でしょうか?
どうしても不可欠な最小単位の技術について権利を取る、ということになります。
上のロボットの例において、どんな模倣品でも頭部を別物にすることはできないものだとすると、頭部の技術(技術A)だけでの権利が広い権利ということができます(下図)。模倣者が他の部分をどんなに変えても、権利である技術Aを使うことになるからです。
まあ、各パーツについてそれぞれ権利を取り、さらに全体としても権利を取る、のが理想です。完全コピー品に対して侵害の主張が容易でしょうから。