飲食店の模倣対策(ラーメン屋を例に)

2018.04.13

 昔から都内のラーメン店めぐり(特にとんこつ)をやっていますが、同時に、商標権が取得されているかも気になります(職業病?)。

 商標権とは店名商品名サービス名などの名称ロゴ(図案)など独占的に使用できる権利です。

 “独占的に”というのは、他の人が自分が使用する店名や商品名、サービス名と同じ名称、さらには類似する名称を禁止できることを意味します。

 違反すると逮捕にいたることもある強い権利です。

<最近のニュース>
「梅ケ枝餅」無断使用 容疑の製造業者逮捕へ
(毎日新聞:2018年4月11日)

 チェーン展開するようなラーメン店の場合、かなりの確率で商標権を取得しています。

<有名店の商標例>
   
(出典:特許情報プラットフォーム)

 知名度が低くなるほど商標権取得率は低いようです。ただ、そうした中には絶対に今のうちから取っておいた方がいいのに、と感じる店もあります。

 一蘭が最初に商標登録出願したのが1993年。それまで一蘭は三沢(かなりローカルな話ですが、西鉄大牟田線で福岡から30~40分ばかり南下したところ。ちなみに私の実家は隣駅)に1店舗あるだけでしたが、ちょうど福岡方面に展開しだした頃だと思います。

 店舗拡大→知名度アップ→模倣出現→ビジネスの邪魔

ということを想定していたのでしょうね。

 その後、一蘭風の店が出現することはありましたが、「一蘭」の名前を語るラーメン店は見たことがありません。商標権取得の効果は大きい思います(商標権を取っていなければ、店名をマネしても違法行為にならないので)。

 以下、商標についてよく聞かれることをQ&Aで記載

Q.有名になってから店の名前を商標登録すれば良いのでは?

A.商標権は早い者勝ちです。つまり有名になってから商標を取ろうとしても、既に同一名や類似する名称について他の人が商標権を取得していた場合はどうにもできません。

Q.既に誰かに商標権を取られていた場合、何か手立ては?審判とか裁判とかお金のかかるようなこと以外で。

A.難しいですね。なので店名を世に出す前に、少なくとも商標調査はしておきたいですね。商標の問題だけでなく、今の時代、似たような名称が存在したらインターネット検索でも競合してしまいますし。

Q.権利化するのにいくらぐらいかかりますか?

A.まず、費用の内訳として、特許庁に支払う法定費用、弁理士の代理人費用の2つがあります。特許庁に支払う費用は決まってます。例えば、店名について“ラーメンの提供”という役務を指定して出願すると、出願時点で12,000円、審査後、登録時点で28,200円(10年分)です(本記事作成時点)。弁理士費用は様々です。このケースだと特許庁費用も込みこみで10万円±αという感じですかね。

Q.今、“ラーメンの提供”という役務を指定して、という話でしたが、これはどういう意味ですか?

A.商標登録出願にあたっては、それをどのようなビジネスに用いるのか、具体的な商品や役務を指定する必要があります。指定した商品や役務、指定した商品や役務に類似する商品や役務にまで商標権の効力が及びます(模倣を禁止することができます)。

Q.ということは、指定した商品や役務と全く関係ないビジネス(例えば自動車製造とか美容院など)に自分の商標と同じ名前が使われても商標権の効力は及ばず、模倣を防げないということですか?

A.そういうことです。

Q.それなら世の中の全商品、役務を指定すれば良いのでは?

A.不可能ではないですが(例えばオリンピック関係の商標はそうした取り方をしています)、費用が膨らんでしまいます。

Q.いくらぐらい?

A.特許庁では商品や役務を便宜的に45に区分けしています。これを区分といいます。区分が1つ増えると、出願時に8,400円、登録時に28,200円かかります。また、弁理士費用も増えていきます。

Q.増えた区分数だけ倍増するということですかね。

A.そうです。それに取るだけとっても、商標を使用しなかったら不使用取消審判という審判で取消対象になってしまいます。なので、確実にビジネスに使用する商品や役務、近い将来、使用するであろう商品や役務を指定するのが一般的です。

Q.ラーメン店の場合だとどんな取り方が一般的ですか?

A.最低限、43類に分類される“飲食物の提供”は指定しておきたいですね。あと、お土産用などラーメンをモノとして商品化する場合は30類に分類される“ラーメン用のスープ”、“ラーメンの麺”など。

Q.だいたいどれくらいの期間で取れますか?

A.現在は10か月+αという感じでしょうかね。

Q.登録されないってこともありますか?

A.あります。類似する他人の登録商標が存在しなくても登録されないこともありますし。従って店名を決めるときに商標権で名称を独占できるかもよく検討すべきということになります。

 先の一蘭の話に戻ると、店舗拡大前に商標登録出願して多少費用がかかったかもしれませんが、今になってみるとかなり安い対策だったのではないでしょうかね。

つづく(?)

LINEで送る