ある企業が自社ホームページを作るということで、「商標権を取得しておいた方がいいのか?」との相談がありました。
過去に「ウェブサイトと知財の留意点」という今回と似たようなものをまとめていますが、このときは第三者の権利侵害にならないようにすることに焦点を当てました。
今回は商標権に絞って自社の権利確保の点から整理してみます。
まず、商標とは何なのか?
ですが、「事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)」と言われています(下例)。
(商標の例 特許庁HP https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/chizai08.htmより)
自分と他人を区別するためのものが商標で、上例の通り、名称やマーク、立体的形状(その他には音や色彩など)が商標権になり得ます。
商標権を取得するためには特許庁に商標登録出願し、類似する登録商標が存在しないことなどが認められる必要があります。問題がなければ、だいたい半年ちょっとで権利化できます。
では、何について商標権を取っておけばよいのか?ですが、
模倣されたくないもの、模倣されるリスクがあるもの
が何なのか考えることで自ずと決まってくるでしょう。
ホームページ上や広告その他の営業活動を盛んにやればやるほど認知度が上がっていきます。その時、模倣されるのが何か、ということです。
上の商標例のように「WALKMAN」という商品名はまさにこれです。
次に、どのタイミングで商標権を取ればよいのか?ですが、
早いに越したことはないです。
商標権は一旦誰かに先取りされてしまうと、これを覆すのは非常に困難です。商標権は原則、早く出した者勝ちなのです。
NHK大河ドラマではしょっちゅう商標権の問題が発生しています。
ちなみに「西郷どん」という登録商標もすでに存在しています。
ホームページの場合、少なくとも公開する前に出願を終えておくべきです。
本サイトでよく取り上げるクラウドファンディング(CF)の場合も同じであり、CF運営事業者は少なくとも必要な商標登録出願を済ませたかどうかは聞いてくると思います。これは、ネットで公開した情報は模倣リスクが高まるからです。
最後に商標登録出願の費用ですが、
特許庁に支払う料金が
・出願料 3,400円+区分数(※)×8,600円
・登録料(最初の10年) 区分数×28,200円
です。
これに代理人(弁理士)手数料がプラスされるイメージです。
なお、区分とは特許庁が便宜的に決めた商品やサービスの分類のことです。基本、似たような商品やサービスを一つの区分としています。全部で45の区分があります。この区分数が1でおさまるなら料金は最小限になりますが、不幸にも使いたい商標の商品やサービスの区分が複数またがる場合は、上式の通り、料金が膨れ上がっていきます。例えば、自社名について商標登録したい場合、ある自社製品一つだけを指定するのなら、区分数は1で済みますが、その製品の保守サービスも指定したいのなら区分数は2になります(ここでは、どのような製品やサービスがどのような区分に該当するかは省略)。