企業が大学の研究室と共同研究することは一般的ですが、この場合のリスクは様々です。
やはりこれは大学の先生にとって企業の知財問題にはあまり興味がない場合が多いからではないかと思います。
大学の先生の場合、
・学会発表
・研究費
の2つが最大の関心事のような気がします(あくまで私見)。
知財との関係で言えば、
学会発表は情報を一般公開するものであり、発表した時点で原則、特許権は取得されなくなりますし、営業秘密として法的保護を受ける価値もなくなってしまいます。
また、学会発表を聞いた他の企業(例えばライバル企業)がその先生のところに意見交換や共同研究の話を持ち込んでくる可能性があり、その際に、自社と行った研究情報が洩れるリスクもゼロではありません(後から接触した企業が提供する研究費が大きいほどリスク大??)。
“利益相反”という言葉があります。
弁理士の場合だとライバル関係にあるA社とB社の競合技術について両者から特許出願の依頼を受けることはできません。恣意的に一方を特許化し、一方を拒絶に追い込むことも可能だからです。これが利益相反のイメージです。
同じことが大学の研究室にも起こり得るのですが、これに対する規制的なものはないように感じます(綿密に調べていないのでわかりませんが、実態としてはない感じ)。
大学と共同研究する際には秘密保持契約(NDA)を結ぶ場合が多いと思いますが(私が知っている企業でNDAを結んでいない企業は多いですが)、先生がうっかりしゃべってしまうということを防止するのは意外と難しいのではないでしょうか(酒の勢いでしゃべる、学生から漏れる、etc)?
この場合、共有する情報のどこからどこまでが自社の重要な財産であるか、他言しないで欲しいこと、を何度となく主張していく(先生の意識を変えていく)しかないかもしれません。
そのためには自社ノウハウなど所有を主張し得る情報についてあらかじめ自社で検討しておく必要があります(これも意外に難しいか)。
その他の留意点としては
発明者、権利者を誰にするか(あるいは、持ち分をどうするか)?
という問題が挙げられます(今回、詳細は割愛)。