プロジェクト実行者と支援者がともに国内居住者であれば、日本という閉じたエリア内での話ということですので、基本的に考えるべきは国内の法律ということになります。
一方で資金調達を海外からも行う場合は問題が複雑になります。
海外との商取引だと考えられ、国内法だけでなく、支援者が居住する関係国の法律も関係してくるからです(下イメージ図)。
クラウドファンディングについては過去記事をご覧ください(知財リスクについては下枠の“事例で見るクラウドファンディングの知財リスク対策”参照)。
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知財リスクに関する基本的な考え方は国内でも海外でも変わるものではありません。
ここでは知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権の3つの権利(“特許権等”と言うことにします)、商標権、著作権に分けて考えます。
1.特許権等(特許権、実用新案権、意匠権)について
これらの権利は国内と海外で権利の取得状況として次のパターンが考えられます。
<権利の有無と取引の制限について>
モノづくり系プロジェクトにおいて完成品をリターン品として設定するケースを想定。
国内 | 海外 | プロジェクト起案者の取引制限と第三者による模倣リスク | |||
自分 | 第三者 | 自分 | 第三者 | ||
① | 無 | 無 | 無 | 無 | 制限無、模倣リスク大 |
② | 有 | 無 | 無 | 無 | 制限無、海外模倣リスク大 |
③ | 有 | 無 | 有 | 無 | 制限無、模倣抑止可 |
④ | 無 | 有 | 無 | 無 | プロジェクト実行不可 |
⑤ | 無 | 無 | 無 | 有 | 海外から資金調達不可 |
⑥ | 無 | 有 | 無 | 有 | プロジェクト実行不可 |
技術やデザインはそれが守秘義務のない者に知れわたった時点で、原則権利化できなくなります。
従って上記①のように何も権利を取得せずにクラウドファンディングプラットフォームで技術内容や商品デザインについて公開すると、原則、誰も権利を取得でなくなります。
従って第三者の権利によってプロジェクトが制限されることはなくなりますが、代わりに第三者の模倣を止めることができなくなります。
気をつけておきたいのが上記⑤の場合です。
国内で権利化されていないからといって、海外支援者との取引行為は権利侵害になります。
2.商標権について
商標権について気をつけておきたいのは、商標登録の対象となり得る商品名やマークなどは守秘義務のない者に知られても権利化できなくなるものではないことです。
つまり、特許権等と違って商標権を取得しないまま商品名や商品マークを公開していると、権利化されていないことに気づいた第三者に商標権を先取りされることがあるということになります。
その場合、商品名を変更するなどして当該第三者の商標権を回避しなくてはならなくなります。
3.著作権について
著作権の特徴は著作物を作った瞬間に著作権が(無登録で)自動的に発生し、全世界的に保護されること、どんなに似たものがあったとしても、それが独自の創作されたものであるなら別個に存在すること、が挙げられます。
クラウドファンディングプラットフォーム上でプロジェクトを公開する行為は、その中に含まれる著作物(文章、写真、音楽、動画、デザインなど)を全世界に発信するということです。
他人の著作物の無断利用は加工を含めて避けるべきでしょう。