これまで国内の事業者が運営するクラウドファンディングプラットフォームについて触れてきました。
<クラウドファンディング関連記事> ・クラウドファンディングとは ・クラウドファンディングプラットフォーム(購入型) ・クラウドファンディングの流れと留意点 ・ラップフィルムケース(新商品)で見るクラウドファンディングの流れと留意点 ・ラップフィルムケースで見るクラウドファンディングの知財ポイント ・知財融資:クラウドファンディング連動 ・クラウドファンディングによる市場予測 |
ここにきて海外のクラウドファンディング運営事業者であるKickstarter(キックスターター)が日本上陸すると話題になっています。
キックスターターはアメリカのクラウドファンディングプラットフォームです。
日本にあるクラウドファンディングプラットフォームと何が違うのか整理してみたいと思います。
<規模>
国内のクラウドファンディング市場は2016年度見込みで478億円。このうちモノづくりなどのビジネス系プロジェクトが多い“購入型”クラウドファンディングは1割弱(50億円弱)です(矢野経済レポートサマリーより)。
(出典:矢野経済レポートサマリーhttp://www.yanoict.com/report/12494.html)
一方、キックスターターのサイトを見ると、2009年に事業を開始し、支援金31億ドル、126,558件のプロジェクト成功という実績が明記されています。国内のプラットフォームとは規模を比べると、少なくとも桁が一つ違う感じです。
本記事作成時にキックスターターのサイトを開いて出てきたプロジェクトに以下のものがあります。
レトロな(?)ゾンビゲームのようなものに約300万ドル(1ドル100円とすると3億円)集まっています。
中には1,000万ドル以上集めたプロジェクトもあります(例えば以下のプロジェクト)。
この規模感の違いが最大のポイントだと思います。
現在、国内クラウドファンディングの最高調達額はプラットフォームによって違いがありますが5,000万円~1億円という規模感です。
成功プロジェクトの多く(平均調達金額)は100万円程度だと言われています。
この調達金額がもし1桁上がるのであればプロジェクト実行者にとっての利用価値も全く違ってくるでしょう。
<ルール>
日本でどのような運用になるのかはわかりませんので、現行(海外)ルールに基づき、国内の購入型クラウドファンディングと比べてみます。
(以下、キックスターターHPのFAQより)
★All-or-nothing(オールオアナッシング)
集まった金額が目標金額に1円でも足りなかったら支援金が手に入らないルールです。
国内クラウドファンディングでは、目標金額に達しなくても支援金額を手にできるAll-in(オールイン)を併用しているプラットフォーム運営事業者が多い点とは対照的です。
★手数料
キックスターターが5%、支払い処理事業者が3-5%です。全体として10%程度ですね。
国内クラウドファンディングはプラットフォーム運営事業者によって手数料が違います(8%から20%台のところまで)。
支援金を手にできなかった場合に手数料が発生しない点は共通です。
★プロジェクトのタイプ
キックスターターには「Art」、「Comics」、「Crafts」、「Dance」、「Design」、「Fashion」、「Film&Video」、「Food」、「Games」、「Journalism」、「Music」、「Photograhy」、「Pubishing」、「Technology」、「Theater」の15のカテゴリーがあります。
これは国内のプラットフォームとほとんど差がないと思います。
やはり、モノづくり系プロジェクトが多いでしょうか。
<今後どうなるか?>
☆高額調達の可能性について
現在の国内クラウドファンディングは支援者の大半が国内在住者です。
資金提供者が国外の人たちにまで広がれば当然調達金額は大きくなると考えられます。
☆リターンについて
海外からの資金提供者に対して何をリターンにするかは大きなポイントになると思います。
実際に出来上がったモノを提供します、というリターン設定に配送費が占める割合は大きくなるでしょう。
また、店舗系プロジェクトでよく設定される“会員権”や“割引”も意味がないでしょう(そう簡単に現地に行けませんので)。
モノづくり系でもネットを通じて提供できるもの(プログラムやデジタル化できるコンテンツ)であればこうした問題はクリアできそうです。
☆知的財産リスクについて
プロジェクト実行者も支援者も国内であれば問題になるのは国内法ですが、国を超えた取引ということになれば相手国のことも考えなければならなくなります。リスクは大きくなります。
これは別の記事にします。