前回、漫画の引用について取り上げました。
<過去記事> ・ブログと著作権(その1) ・ブログと著作権(その2):漫画の引用 |
今回は他人の写真の引用について取り上げます。
“写真”も著作物です(著作物になり得るものです)。
自分で撮った写真の著作権は自分のものです(著作権は登録などする必要がなく、写真が出来た瞬間に著作権が発生します)。
一方、他人が撮った写真を勝手に使うとその人の著作権を侵害することになります。
最近ではIT大手の医療系まとめサイトで他人の著作物が勝手に使われたということで問題になりました。
<記事> “2万本で著作権侵害の恐れ=写真74万件、個別補償も-DeNA、まとめサイト問題”(JIJI.COM) http://www.jiji.com/jc/article?k=2017031300783&g=soc |
ただし、これまでの記事でも触れた通り、以下の場合は著作権侵害になりません。
1.著作権が切れている場合 2.権利者から許諾(や著作物を譲渡)してもらった場合、著作権が放棄されている場合 3.引用などの例外規定に該当する場合 |
前回、引用とは(それが法的要件に従っていれば)例外なく認められるものだと言いました。
従って写真についても引用はできますし、漫画の場合と考え方が変わるものではありません。
<過去記事> ・ブログと著作権(その1) ・ブログと著作権(その2):漫画の引用 |
前回、引用に関して説明した通り、
“公表された著作物であること”
をはじめ、いくつかの要件を満たす必要があります。
どのように引用すべきかはこれまで判例によって判断基準が出来てきました。
そうした判断基準を示した“パロディ事件”という有名な裁判があります。
写真のパロディが原因で最高裁までいった事件です(下枠:写真は裁判所HPより)。
<バロディ事件> (事件番号 昭和51年(オ)第923号) 左の写真は原告が撮影した元々の写真です。 元々の写真を利用してシュプールがタイヤの跡に見えるように加工したことが著作者人格権を侵害すると判断されました。 |
様々な判例によって受け入れられている引用の判断基準は、
[1] 主従関係
引用する側とされる側の双方は、質的量的に主従の関係であること
[2] 明瞭区分性
両者が明確に区分されていること
[3] 必然性
なぜ、それを引用しなければならないのかの必然性
です。また、
“出所を明示”
“引用物を加工しないこと”
も漫画の引用の場合と同様です。
ただ、上記医療系まとめサイトの問題でもわかる通り、写真の引用は漫画の引用と同様に(むしろそれ以上に?)リスクをはらんでいます。
まとめサイトの問題を見ていくと、
当初、サイト運営事業者はキュレーターと呼ばれる記事作成者に対して、写真画像は閲覧者の目を引くものなので効果的に活用するよう推奨していました。
写真は抜群の訴求力を持つ素材だと言えます。
写真を見ただけで内容が伝わってくることも多いでしょう。
そうした写真の使い方によっては記事が上記3要件を満たさないケースも出てきます(下枠)。
<想定されるケース> ・写真が“主”になっている場合(上記3要件の[1]を満たさない)
・写真を用いる必然性がない場合(上記3要件の[3]を満たさない) |
また、漫画の場合は一コマ(すなわち著作物全部でなく引用に必要な一部分)を切り出し用いることで引用の正当性を主張しやすいかもしれませんが、写真の場合は写真をまるまる(著作物を全部)用いる場合がほとんどでしょうし、かと言ってへたに一部を切り出すと勝手に加工した(著作者人格権を侵害した)と言われる可能性もあります。
このように写真は気をつかう著作物です。