前回記事「知財融資について:知財ビジネス評価書」では知財ビジネス評価書が融資に結びつく(かもしれない)話をしました。
今回はクラウドファンディングと連動した金融機関の取組みについて整理します。
なおクラウドファンディングについては過去記事(以下)をご参照ください。
・クラウドファンディングとは
・クラウドファンディングプラットフォーム(購入型)
・クラウドファンディングの流れと留意点
・事例で見るクラウドファンディングの流れと留意点
・事例で見るクラウドファンディングの知財リスク対策
現在、国内にクラウドファンディングプラットフォーム運営事業者がかなり存在しますが、金融機関と連携した動きと言えばMakuake(マクアケ)を運営するサイバーエージェント・クラウドファンディングが挙げられます。
Makuakeはモノづくりなどのビジネス系のプロジェクト支援に力を入れています。最高で1億円近い資金を集めたプロジェクトもあります(2017年5月12日時点)。
Makuakeと金融機関の連携に関する記事をいくつか挙げます。
・常陽銀行と業務提携(2017年1月23日)
・みずほ銀行との連携(2016年12月9日)
・城南信用金庫、千葉銀行等と業務提携(2016年5月25日)
こうした動きが世間的に広まったキッカケは今年の1月に放送されたガイアの夜明けです(出演された坊垣さんの話では、放送以降、金融機関からの問い合わせがかなり増えたそうです)。
番組ではクラウドファンディングを商品のテスト販売の場ととらえて、もし500万円以上集めることができたら、それを岐阜信金が融資の判断材料にするという話が紹介されました(以下のプロジェクト)。
クラウドファンディングとはインターネットを使った資金調達手段ではあるのですが、私はこのようにテスト販売(さらには口コミ戦略)のツールとして活用余地が大きいと思います。融資の判断材料になり得るものだと思います。
クラウドファンディングプラットフォームに公開された商品を判断するのはそれを買いたいと思う消費者です(一部内部関係者も存在します)。
金融機関の融資判断部署や金融機関と連携する専門家がどんなに事業性評価や知的財産価値評価をしても、それを買いたいと名乗り出る消費者の声には絶対に勝てません。
クラウドファンディングの資金提供者が一定数いるということは事業として成功率が高いことを意味します(当然慎重に考えねばなりませんが)。
ある意味、究極の知財価値評価になるのかもしれません(知財価値評価には様々な手法がありますが、結局、机上でごにょごにょやっているだけで、どれだけ意味があるのかと首をかしげたくなることが多いです)。
このクラウドファンディングと融資をスキーム化したのが上記、常陽銀行とのリリース記事です。
クラウドファンディングで100万円~500万円の資金調達額のプロジェクトについて最高500万円の融資を行うというものです。
なお、資金調達額に範囲制限がある点、融資額は500万円限度である点について理由はよくわかりません。初めての試みなので大きなリスクにならないように様子見でしょうかね?
こうした新しい動きは一つの組織がやると他も続くように乗り出して来るでしょう。
今後、このような融資形態が広がると予想します。