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特許を取るには何かが足りないパターン

2019.07.17

 スタートアップ企業出願経験のない/少ない企業によくある話です。

 「この商品の特許を取りたい

という相談を受ける場合に、特許を取るにはもう一つというよくあるパターンを紹介します。

1.単に思いつきのもの

 閃いたアイデアのまま特許を取りたいというもの。

 〇〇という商品が閃いた、とか、△△というビジネスモデルで商売を始めたい、など。

 こちらとしても早い段階からいろいろとアドバイスができるので、この段階での相談というのはある意味理想的なタイミングだと言えます。

 ただ、アイデアレベルのままでは特許を取れる可能性は小さいです。

 毎年何十万件という特許出願がなされていて、その中には自分が考えたアイデアと似たようなものがあるかもしれません。

 昔、メーカー勤務時代に同期が「電気自動車の時代が来たら無音走行になって危ないから、歩行者のためにあえて音を発生する装置を作れば売れる。俺が出願するまで他言するな」と言っていたことがあります。ですが、実際にそのアイデアはすでに数年前に大手自動車メーカーから特許出願されていました。

 

 このような競合発明は特許化の障害になります。

 似たようなアイデアは同じようなタイミングであちこちで着想を得ている人が存在するみたいです。

 このような場合、どうすれば良いか?

 公知のアイデア、類似するアイデアよりも技術的に優れた点を見出して、裏づけをとる(開発を進めていく)ことが必要になります。

 上の自動車の音発生装置の例だと、単に注意喚起音を発生するというだけのものでは出願の順番に関係なく特許化は難しいと思われます。

 音を出して歩行者に気づかせる装置としては車のクラクション自転車のベルが存在します。こうした音を電子化して通常走行時に発生することは技術的に困難なものではありません。ビジネス的に新規ではあっても転用容易であったり、こうした転用を容易に考えつくことができるものには特許は与えられないのです。

 

 この場合、発生音が小さくても歩行者の注意を引きつける音の質になっている、とか、事故につながりそうなシチュエーションであるかどうかをセンサーが識別して危ない場合だけ音を出す、などの技術的に独自の工夫が施されていれば(かつ、技術的に優れていれば)、特許になる可能性が高まります。

 こうしたことは試作してみてある程度、技術的な裏づけをとる必要があります。

 特に化学的要素が絡んでくる発明においては必須と言えます(その効果を実験結果で示すしかないから)。

 

2.有用なデータが取られていないもの

 試作品までできているが権利化を主張するのに有用なデータがないもの。

 産学連携の商品開発に関わることがありますが、産学連携においてもこれをよく感じます。

 まあ、大学は特許を取るために研究しているのではないのである程度仕方のないことかもしれません。

 よくあるのが、“効果あり”、というだけの実験で終わっているパターンです。その、効果、が特許化に必要な効果としては不十分なことがあります。

 例えば、プロテインなどのサプリメント商品を例に挙げると、“被験者の筋肉が向上した”、という実験結果で終わっている場合がこれに該当します。

 →→→→→

 その商品に一定の効果があることを示すのであれば、こうした実証データ競合他社品との比較データだけで十分かもしれません。

 ユーザーの興味を引きつける実証データは重要な情報です。ただし、収集データ数が少ない場合焦点がズレている場合、仮に特許を取れたとしても非常に狭い権利範囲になってしまいます。

 また、競合商品が多数存在する場合、単に成分配合率を変えた、などは研究開発において当たり前の話だといえます。そうすると、“新たな配合比を見出した”と感じるものであっても(特許庁の審査官は当業者が容易に考えつくものと判断し)特許にはなりません。

 成分の配合率に真の工夫があるのであれば、〇〇成分が下限△△%~上限▽▽%の場合に非常に高い効果を示す、というように臨界が見極められた情報収集をする必要があります。

<少ないデータに基づいて権利化した場合>
 例えば、成分A、B、C、Dが40%、30%、20%、10%の場合に効果あり、という限られたデータに基づいて、その場合の配合比率で特許が取れたとします。
 
 そうすると、この比率については確かに自社独占ですが、効能にほとんど影響のない成分を混ぜるなど配合を変えた模倣品には権利が及びません。

 また、上例の商品は体づくりに役立つという実証データはプロモーション的に重要でしょうが、特許的には(競合多数、配合率は研究されつくしている場合には)別の技術要素にフォーカスした方が良い場合もあるかもしれません。

 例えば、いくら摂取しても飽きない特殊な甘味料が含まれている、とか、製造方法に特徴があって非常に安価に製造できる、といった点に技術的特徴を見出すことができるかもしれません。

 そうであれば、(筋肉が発達した、という実証データだけでなく)そうした技術的特徴を裏付けるデータ収集を行うことが必須になります。

 

 以上、よくある2パターンを紹介しました。

 

 特許化のためには、結局はどこに自社の技術的独自性を見出していくかということがポイントになります。

 そのためには上記1、2で触れた知財の視点を取り入れた商品開発が必須です。

 なかなか簡単なことではないとは思いますが。

 

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実用新案の最大のメリットは?

2019.07.05

 本日、他の先生と実用新案権の一番のメリットは何だろう、という話になりました。

 実用新案とは“小発明”とか“ママさん発明”なんて呼び方をされることがあります。

 ちょっとしたアイデア商品が対象になります。

 かかと部分をちょんぎった“ダイエットスリッパ”とか洗濯機に浮いたゴミを捕集する“糸くずフィルター”のようなちょっとした工夫が施された商品(ハイテクとまでは言えない便利商品)が実用新案権の対象イメージです。

 

 特許庁の説明によると、

そもそも実用新案とは? 実用新案権を取るメリットは?

  1. 物品の形状、構造又は組み合わせに係る「考案」が保護の対象。
  2. 権利の対象となる考案の実施(生産、使用、販売など)を独占でき、特許庁が発行する「実用新案技術評価書」を提示すれば、権利侵害者に対して差し止めや損害賠償を請求できる。
  3. 無審査で、迅速・安価に登録が可能。
  4. 権利期間は、出願から10年。(特許は20年。)
    出典 特許庁(https://www.jpo.go.jp/system/basic/jituyo/index.html#01

とあります。

 が、今回、わざわざ実用新案権のメリットは?と言うのは、そもそもデメリットが大きいからです。

 大きなデメリットとして、全ての出願が原則、無審査で登録されるため、

・権利として信用力がない(無効になる可能性がある)

・実用新案権をふりかざして相手に損害を与えると場合によってはこちらが損害賠償責任を負う(実用新案法第29条の3)

ということが挙げられます。

 これらは上記特許庁説明の3番の裏返しと言えます。

 有象無象のアイデアも実体的な審査はされずに(無効になるという瑕疵を有したまま)権利になってしまうのが実用新案権です。

 真に優れた技術であるなら特許権による保護が有用ですし、外観に特徴があるなら意匠権で保護するという手もあります。

 そうした理由から実用新案権を積極的にすすめる弁理士は多くないと思います。

 そのような中で実用新案権のメリットをどこに見出すことができるか、が今回の焦点です。

 

 今回の話の結論は、(あくまで一意見となりますが)実用新案権の大きなメリットとして、

 うやむやな権利状態のまま第三者への牽制効果を10年間継続できる

ということを挙げることができます。

 実用新案を特許と比較すると、権利がうやむやな状態を維持できる期間

特許 3年間(審査請求期限までの期間)
実用新案 10年間(実用新案権の権利期間)

と考えることができます。

 特許の場合、出願から3年以内に審査請求という手続きをしなければ未審査のまま出願取り下げになります。つまり“出願中”ということで第三者を牽制できるのは3年間(審査請求し、拒絶査定になった場合は3年+αの期間)です。

 一方、実用新案の場合、(権利が無効かどうかという問題はあるものの)10年間、第三者を牽制し続けることができます。

 米国などに比べると、日本では実際に訴訟に発展するケースは多くないですし、権利侵害の可能性があると知ってなお積極的に争いに首を突っ込む企業は多くないと思います(時間とお金のムダですし)。

 であれば、簡単に権利化でき、より長期間、牽制効果がある実用新案権にはそれなりのメリットがあると考えて良いかもしれません。

 費用面ではどうか?

 上記特許庁説明によると“安価”に登録可能とあります。

 通常、権利化費用は大きく分けて、特許庁に支払う法定費用弁理士に支払う代理人費用があります。

  法定費用 代理人費用※3
特許 1万4千円(出願料)※1 40~50万円
実用新案 1万4千円(出願料)
11万1400円(登録料)※2
20~30万円

※1 審査請求料、登録料は考えない(審査請求せずに3年で取り下げを想定)
※2 請求項数3、10年間維持で計算
※3 出願時における費用(日本弁理士会H15年アンケート結果のボリュームゾーンの費用:https://www.jpaa.or.jp/howto-request/attorneyfee/attorneyfeequestionnaire/#b4)(ただし、現在の費用は当時より下がっていると考えられる)

 上表を見ると、牽制効果、という限定的なメリットに関して費用面では、本当に安価なのか?と感じる部分はあります。

 費用面は諸々の効果を考えると特許の場合とトントンでしょうか。

 ただひたすら牽制という利益だけ享受できれば良いというのであれば実用新案は有用、最大のメリットかもしれないというのが今回の結論です(特許と比べると、総合的には特許の方が有用な場合が多いと判断しますが)。

 

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よくあるカン違い:広い権利とは

2019.06.24

    特許権をできるだけ広い範囲で取りたい、という場合によく見られるカン違いについて紹介します。

 下のようなロボットを開発し、このロボットについて特許をとろうとする場合を例に挙げます(あくまで例えであり、機械の発明だけでなく、化学やIT等の発明でも考え方は同じです)。

 

 特許は技術を保護するものです。
 ですので、上のロボットに使われている技術が保護対象になり得ます。

 ここでは簡単に考えて、頭部の技術、胸部の技術、腕部の技術・・・という感じで、全体として5つの技術要素からなるものとします(下図)。

 

 このロボットについて(ロボットの技術について)どのように特許を取るべきでしょうか?

 全ての技術をひっくるめてとるべき(A+B+C+Ⅾ+E)?

 ↑これがよく見られるカン違いです。

 ここで、頭から足まで全ての技術要素を含んだ権利を取ったらどうなるのか?

 この場合、以下のような事態が考えられます。

 上記ロボットを上市し、評判が良いとさっそく模倣品がでてくるでしょう。

 下のような模倣品がでてきたら特許権侵害を主張できるでしょうか?
 (下のロボットは胸部だけが自社技術と異なる技術を用いているとします)

  

 結論から言うと、上の模倣ロボットに対して権利侵害を主張することはできません。

 A+B+C+D+E、で権利を取った場合、A~Eまでの全ての技術を含んむものにしか権利が及ばないからです。

 

 上の右のロボットの技術の権利はA+F+C+D+Eであり、A+B+C+D+Eではありません。

 すなわち、技術全体として別物、ということになります(均等論、という別の考え方がありますが、ここではこれは考えないものとします)。

 このように、様々な技術要素を組み合わせていくほど権利範囲は狭くなってしまいます(その分、権利は取りやすくなると考えることはできますが)。

 上はロボットの例ですが、製造方法の発明や化学分野の発明でも同じことです(反応A+反応B+反応C+反応Ⅾ+反応E、という感じで)。

 では、模倣品に備えた広い権利とはどのような権利でしょうか?

 どうしても不可欠な最小単位の技術について権利を取る、ということになります。

 上のロボットの例において、どんな模倣品でも頭部を別物にすることはできないものだとすると、頭部の技術(技術A)だけでの権利が広い権利ということができます(下図)。模倣者が他の部分をどんなに変えても、権利である技術Aを使うことになるからです。

 

 まあ、各パーツについてそれぞれ権利を取り、さらに全体としても権利を取る、のが理想です。完全コピー品に対して侵害の主張が容易でしょうから。

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創業におけるCF活用

2019.06.13

 本日、キビダンゴを訪問し、創業者支援や知財対策に関して意見交換してきました。

 私からは

 ・創業時にCFを活用し、かつ、成長しつづけている事業はあるのか?

 ・そうした事業者にどのタイミングで金融機関がお金を貸してくれるようになったか?

といったことを聞いてみました。

 個人的には、CFで新規事業資金の全てを調達するのはなかなか大変なのではないかと思います。普通は、自己資金+CF調達資金、でしょうか?

 また、運転資金を安定的に調達するには金融機関からの借り入れも視野に入れる必要があります。ただ、何の実績もない人に何千万円も融資してくれる金融機関はないでしょう。

 CFプロジェクトが成功したら金融機関は評価してくれるのか?そういった疑問もあります。

 

 以下、やりとりをQ&A形式で記載します。

私:CFサービスが世にでてきて、それなりの月日が経ちました。CFで目標金額を達成し、今も事業がうまくいっている人っていますか?

A氏:結構いますよ。そうした人の中にはCFを事業ツールの一つとして繰り返し活用している人もいます。

私:例えばどんなプロジェクトがあるのでしょうか?

A氏:殺処分になる猫を保護する考えから始まった猫カフェのプロジェクトがあります。
  保護猫カフェ ネコリパブリック東京を御茶ノ水にOPEN!保護猫達が人と触れ合い幸せになるチャンスが生まれる最高の場を作りたい

私:この方のビジネスはいつ頃から始まったのですか?

A氏:2014年頃だったかと思います。猫好きの人から資金を集め、猫カフェを立ち上げ、今ではグッズなんかも展開しています。うちのリピーターでCFだけで数千万円資金を集めています。

私:カフェを舞台に人のつながりとかサービス、商品の展開など、単なる慈善事業ではなく、ビジネスとして様々な広がりができているようですね。

A氏:そうです。民間企業ではネスレやシマホなんかとコラボしています。
   (関連記事)自慢のかわいい愛猫の写真で猫助けができちゃう!シマホXネスレ ピュリナ ペットケアXネコリパブリック共同企画。インスタで保護猫を救う&マークを集めて保護猫を救うネコダスケステーションがスタート!(PRTIMES)

私:ここまで来ると金融機関は喜んでお金貸してくれそうですね。CFでのサポーター(支援者)の数、資金調達額っていうのも対外的な説得力が大きいように見えてきます。

A氏:CFが出てきた当時、金融機関はCFを敵視している部分もありましたが、協業する余地の方が大きいと見ています。金融機関がどう見ても判断しかねる実績のない事案はCFに向いています。CFなどで実績がでてくれば金融機関も融資判断がしやすくなるでしょう。そうした事業のタネを金融機関とCFで役割分担しながら対応していければ創業者支援はかなり前進かもしれません。

私.ところで、最近のプロジェクトは写真にしても、動画にしても、以前に比べてかなり凝っているようですが。これらは資金調達に重要な要素ですか?

A氏:めちゃくちゃ重要です。写真などの見せ方が閲覧者に響くか、そうでないかは支援者数にものすごく響いてくるという実感があります。ただ、写真とかデザインとかは最近分業化していて、実行者が自ら全てやるという感じでもなくなってきています。

私:苦手な部分は人に頼めるとしたら、結局はプロジェクトのコンセプトが大事ってことですかね?

A氏:そう思います。

 こんな感じです。

 具体的にどんなタイミングで金融機関の態度が変わっていくかはケースによるのでしょう。上の例では民間企業とのコラボなんかも金融機関にとって大きな判断要素になり得るのではないでしょうか。

 こうしたCFプロジェクトは支援者が多くなるほど情報が拡散していきますし、コラボしたいと思う企業の目に触れる機会も大きくなっていきます。

 一方、CFは事業化前のネタを先行公開する情報の宝庫とも言えます。

 そこを狙って、おもしろそうな製品などの情報をCFから仕入れ、海外でいち早く模倣品を作ろうとしている輩もいるようです。

 どのような情報を公開するか、どの部分を権利として押さえておくか、ますます重要になってくるでしょう。知財に関しては別の記事で。

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ホームページリニューアルしました

2019.05.28
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有名キャラクターを拝借しても大丈夫?

2019.02.07

 街中を歩いていると、ドラゴンボールワンピースに出てくるキャラクターの絵が描かれた立て看板を見ることがあります。歩行者の注意を引くわけですから、それを見た人の中の1%でもより多く店舗に誘導できるのであれば狙い通りといったところでしょうか。

 また、アンパンマンの顔の形をしたパンが販売されているなんて話はザラですね。おそらく子供達には大人気なのでしょうね。

 このように有名キャラクター(具体的なデザイン)を拝借したときにどのような問題があるのでしょうか?

 上記のように有名キャラクターを拝借することは昔からありましたが、最近は時代の流れなのか、著作権的に大丈夫なのか心配、という声を事業者からよく聞くようになりました。

 例えば、

 ・上記のようにキャラクターをあしらったパンを製造販売する場合は大丈夫なのか?

 ・キャラクターの原作者が著作権に寛容って聞いたので多分大丈夫だと思うのだけれど・・・

 ・キャラクターを使った商品は単なる客寄せで商品数は多くないから問題ない?

 ・お客さんが指定するキャラクターをオーダーメイド商品で作っているだけだから、こちらには何の責任もないってことでよいのか?

などなど

 著作権法に照らし、最小限の範囲で見てみます。

 著作権法に、

(複製権)
第二十一条
 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

とあります。

 単に、印刷とか写真だけでなく、有形的に再製する行為は「複製」です。つまり、著作者の許可なく複製することはできません。

 店の立て看板に超サイヤ人の絵を描くことも、パン生地が焼きあがりアンパンマンになっていることも「複製」です(ここでは拝借するキャラクターデザインは著作物である前提で進めます)。

 であれば、著作者の許可なく複製することはできません。

 ただ、いくつか例外があります。

 <著作権が切れている場合>

  著作者の死後70年が経過している場合です(下記)。

(保護期間の原則)
第51条 (第1項省略)
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)七十年を経過するまでの間、存続する。

  ただ、キャラクターとしてパワーを持つものはほとんどがこの条件に当てはまらないと思います。作者が亡くなっているドラえもんにしてもアンパンマンにしても大分待たなくてはなりません。

 <著作者が自由利用を認めている場合>

 自由に使っていいよ、という著作者の許可がある場合です。

 アンパンマンが著作権フリーだという声をよく耳にしますが、アンパンマンのポータルサイトを覗いてみたところ、

「・・・許諾を得ずに・・・複製・・・をすることは禁じられています」(下記URL)
http://www.anpanman.jp/etc/user.html

とありました。

 <個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的としている場合>

 友達2~3人とか家族内で楽しむ場合です。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(以下、省略)

 ここでよくあるのが、オーダーメイド品お客さんが指定したキャラクターデザイン通りにパンを焼き上げる、など)ならそのお客さんが自分のためとするものでから良いのでは?という勘違い。

 例えば、自分自身でアンパンマンの形をしたパンを焼くのは「個人的に又は家庭内」と言えるでしょうが、ビジネスとしてお客さんのためにキャラクターデザインを複製するのはこれに当てはまらなくなります

 ということで、有名キャラクターをタダでビジネス活用できるといううまい話しはなかなかないですね。

 <ご参考>
 著作物を利用する場合の手順について文化庁がHP上に公開されています。

http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/riyohoho.html

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飲食店の模倣対策(ラーメン屋を例に)

2018.04.13

 昔から都内のラーメン店めぐり(特にとんこつ)をやっていますが、同時に、商標権が取得されているかも気になります(職業病?)。

 商標権とは店名商品名サービス名などの名称ロゴ(図案)など独占的に使用できる権利です。

 “独占的に”というのは、他の人が自分が使用する店名や商品名、サービス名と同じ名称、さらには類似する名称を禁止できることを意味します。

 違反すると逮捕にいたることもある強い権利です。

<最近のニュース>
「梅ケ枝餅」無断使用 容疑の製造業者逮捕へ
(毎日新聞:2018年4月11日)

 チェーン展開するようなラーメン店の場合、かなりの確率で商標権を取得しています。

<有名店の商標例>
   
(出典:特許情報プラットフォーム)

 知名度が低くなるほど商標権取得率は低いようです。ただ、そうした中には絶対に今のうちから取っておいた方がいいのに、と感じる店もあります。

 一蘭が最初に商標登録出願したのが1993年。それまで一蘭は三沢(かなりローカルな話ですが、西鉄大牟田線で福岡から30~40分ばかり南下したところ。ちなみに私の実家は隣駅)に1店舗あるだけでしたが、ちょうど福岡方面に展開しだした頃だと思います。

 店舗拡大→知名度アップ→模倣出現→ビジネスの邪魔

ということを想定していたのでしょうね。

 その後、一蘭風の店が出現することはありましたが、「一蘭」の名前を語るラーメン店は見たことがありません。商標権取得の効果は大きい思います(商標権を取っていなければ、店名をマネしても違法行為にならないので)。

 以下、商標についてよく聞かれることをQ&Aで記載

Q.有名になってから店の名前を商標登録すれば良いのでは?

A.商標権は早い者勝ちです。つまり有名になってから商標を取ろうとしても、既に同一名や類似する名称について他の人が商標権を取得していた場合はどうにもできません。

Q.既に誰かに商標権を取られていた場合、何か手立ては?審判とか裁判とかお金のかかるようなこと以外で。

A.難しいですね。なので店名を世に出す前に、少なくとも商標調査はしておきたいですね。商標の問題だけでなく、今の時代、似たような名称が存在したらインターネット検索でも競合してしまいますし。

Q.権利化するのにいくらぐらいかかりますか?

A.まず、費用の内訳として、特許庁に支払う法定費用、弁理士の代理人費用の2つがあります。特許庁に支払う費用は決まってます。例えば、店名について“ラーメンの提供”という役務を指定して出願すると、出願時点で12,000円、審査後、登録時点で28,200円(10年分)です(本記事作成時点)。弁理士費用は様々です。このケースだと特許庁費用も込みこみで10万円±αという感じですかね。

Q.今、“ラーメンの提供”という役務を指定して、という話でしたが、これはどういう意味ですか?

A.商標登録出願にあたっては、それをどのようなビジネスに用いるのか、具体的な商品や役務を指定する必要があります。指定した商品や役務、指定した商品や役務に類似する商品や役務にまで商標権の効力が及びます(模倣を禁止することができます)。

Q.ということは、指定した商品や役務と全く関係ないビジネス(例えば自動車製造とか美容院など)に自分の商標と同じ名前が使われても商標権の効力は及ばず、模倣を防げないということですか?

A.そういうことです。

Q.それなら世の中の全商品、役務を指定すれば良いのでは?

A.不可能ではないですが(例えばオリンピック関係の商標はそうした取り方をしています)、費用が膨らんでしまいます。

Q.いくらぐらい?

A.特許庁では商品や役務を便宜的に45に区分けしています。これを区分といいます。区分が1つ増えると、出願時に8,400円、登録時に28,200円かかります。また、弁理士費用も増えていきます。

Q.増えた区分数だけ倍増するということですかね。

A.そうです。それに取るだけとっても、商標を使用しなかったら不使用取消審判という審判で取消対象になってしまいます。なので、確実にビジネスに使用する商品や役務、近い将来、使用するであろう商品や役務を指定するのが一般的です。

Q.ラーメン店の場合だとどんな取り方が一般的ですか?

A.最低限、43類に分類される“飲食物の提供”は指定しておきたいですね。あと、お土産用などラーメンをモノとして商品化する場合は30類に分類される“ラーメン用のスープ”、“ラーメンの麺”など。

Q.だいたいどれくらいの期間で取れますか?

A.現在は10か月+αという感じでしょうかね。

Q.登録されないってこともありますか?

A.あります。類似する他人の登録商標が存在しなくても登録されないこともありますし。従って店名を決めるときに商標権で名称を独占できるかもよく検討すべきということになります。

 先の一蘭の話に戻ると、店舗拡大前に商標登録出願して多少費用がかかったかもしれませんが、今になってみるとかなり安い対策だったのではないでしょうかね。

つづく(?)

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Ⓡマーク、©マークの意味と効果

2018.04.10

 よく🄫って何って聞かれます。

 雑誌やプレゼンテーション資料などにこれらの文字がくっついているのをよく見るかと思います。

 Ⓡは文字の右肩あたりに、例えば、ABCと、ついていることが多いです。

 🄫はプレゼン資料の各ページの下の方に西暦、団体名(あるいは個人名)とともに記載されていることが多いです。

 結論から言うと、

 Ⓡ・・・商標登録(Registered Trademark)マーク

 🄫・・・著作権(Copyright)マーク

です。

 違いは何か?

 商標とは、商品や店の看板などに付す目印(それを見た需要者が誰々のものだと識別するもの)です。

<商標権>
 自社名(トヨタ、とか、SONYなど)、商品名(LEXUS、とか、WALKMANなど)などについて商標権を取得するのが一般的です。

 特許庁に、自社事業に係る商品やサービスを指定して申請すると(例えば、自「自動車」という商品を指定)、通常は約6~8カ月で登録可否が審査され、問題がなければ(登録料を納付することで)登録されます。

 商標登録されると、申請時に指定した商品やサービスについては独占的にその商標を使用することができます。

 つまり、Ⓡマークを付すことで、その商標(自社名、商品名など)には独占権が与えられていて、勝手に同一名や類似名を使ったら違法になりますよ、ということを第三者に知らしめることができることになります。

 一方の著作権ですが、著作権とは文章や絵画、書籍、音楽、映画、写真、地図、プログラムなど表現物について与えられる権利です。

<著作権>
 著作権は表現物を作った瞬間に発生し、登録をする必要がありません
 また、日本、欧米、アジアなどかなりの国が加盟しているベルヌ条約という著作物保護に関する条約において世界的に保護されています(⇔商標は登録した国のみで保護)。

 🄫マークはその文章や絵画などに著作権があることを知らしめ、これを勝手に複製したり、ネットにあげたりすると違法行為になることを知らしめる効果があります。

 商標の場合と似ていますが、微妙に違いがあります

 登録商標と同一または類似する商標を、指定された商品や類似する商品などに用いる行為は、知らなくてもアウト(違法行為)です。

 一方、著作物は、他人の著作物を知らずに独自に創作したら偶然似ているものだった、というのはセーフ(それぞれの著作物についてそれぞれの著作権が認められる)なのです。

 ただ、🄫とともに発行年、著作者名を表示することで紛争にそなえるという意義はあります(自分が先に創作したものが明らかであれば、訴えられようがないですから)。自分で創ったものだぞ、という意思表示にもなりますよね。

 あと、この他にTMというマークを見たこともあるかもしれません。

 これはTrademark(商標)を意味するものです。登録されているか否かに関わらないので、登録商標にTMと付されている場合もあれば、登録されていないものに付されている場合もあります。

 

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ホームページを作る際の商標の問題

2018.01.18

 ある企業が自社ホームページを作るということで、「商標権を取得しておいた方がいいのか?」との相談がありました。

 過去に「ウェブサイトと知財の留意点」という今回と似たようなものをまとめていますが、このときは第三者の権利侵害にならないようにすることに焦点を当てました。

 今回は商標権に絞って自社の権利確保の点から整理してみます。

 まず、商標とは何なのか?

 ですが、「事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)」と言われています(下例)。


(商標の例 特許庁HP https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/chizai08.htmより)

 自分と他人を区別するためのものが商標で、上例の通り、名称マーク立体的形状(その他には色彩など)が商標権になり得ます。

 商標権を取得するためには特許庁に商標登録出願し、類似する登録商標が存在しないことなどが認められる必要があります。問題がなければ、だいたい半年ちょっとで権利化できます。

 では、何について商標権を取っておけばよいのか?ですが、

 模倣されたくないもの模倣されるリスクがあるもの

 が何なのか考えることで自ずと決まってくるでしょう。

 ホームページ上や広告その他の営業活動を盛んにやればやるほど認知度が上がっていきます。その時、模倣されるのが何か、ということです。

 上の商標例のように「WALKMAN」という商品名はまさにこれです。

 次に、どのタイミングで商標権を取ればよいのか?ですが、

 早いに越したことはないです。

 商標権は一旦誰かに先取りされてしまうと、これを覆すのは非常に困難です。商標権は原則、早く出した者勝ちなのです。

 NHK大河ドラマではしょっちゅう商標権の問題が発生しています。

 

産経ニュース
 
「直虎」商標登録問題 特許庁が浜松市の異議認めず 長野・須坂の業者「話し合い...
http://www.sankei.com/life/news/170407/lif1704070018-n1.html
NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」の舞台の浜松市が、長野県須坂市の老舗みそ・しょうゆ製造販売会社「糀屋本藤(こうじやほんどう)醸造舗」などが登録していた「直虎」…
 

 ちなみに「西郷どん」という登録商標もすでに存在しています。

 ホームページの場合、少なくとも公開する前に出願を終えておくべきです。

 本サイトでよく取り上げるクラウドファンディング(CF)の場合も同じであり、CF運営事業者は少なくとも必要な商標登録出願を済ませたかどうかは聞いてくると思います。これは、ネットで公開した情報は模倣リスクが高まるからです。

 最後に商標登録出願の費用ですが、

 特許庁に支払う料金が

 出願料 3,400円+区分数(※)×8,600円

 登録料(最初の10年) 区分数×28,200円

です。

  これに代理人(弁理士)手数料がプラスされるイメージです。

 なお、区分とは特許庁が便宜的に決めた商品やサービスの分類のことです。基本、似たような商品やサービスを一つの区分としています。全部で45の区分があります。この区分数が1でおさまるなら料金は最小限になりますが、不幸にも使いたい商標の商品やサービスの区分が複数またがる場合は、上式の通り、料金が膨れ上がっていきます。例えば、自社名について商標登録したい場合、ある自社製品一つだけを指定するのなら、区分数は1で済みますが、その製品の保守サービスも指定したいのなら区分数は2になります(ここでは、どのような製品やサービスがどのような区分に該当するかは省略)。

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