ここまで、
・いかに模倣を早く見つけるか?
・模倣品を発見した場合の対応
・模倣の場所と対応
について触れてきました。
<過去記事>
模倣リスク対策(その1):いかに模倣を発見するか
模倣リスク対策(その2):模倣を発見したら
模倣リスク対策(その3):模倣場所と対策
今回はインターネット取引の模倣を発見した場合についてです。
ECサイトで模倣品を発見した場合、どのような対応があるか?
ここまで何度か紹介してきたラップフィルムケース(下の写真)を元に仮想事例を進めます。
上写真のラップフィルムケース内にはラップフィルムが入っています。サ〇ンラップの紙ケースがプラスチックケースに変わったようなものです。 通常は刃がケース内におさまっていて、下の写真のように真ん中のスイッチのようなものを押すと刃が飛び出してきます。 例えば、料理中に片手がふさがっているとき、清潔さが求められる業務でフィルムケースを手に持てないというとき、などに冷蔵や壁に設置されたこのフィルムケースなら最小限の労力と清潔を保ちつつラップフィルムを取り出せます。 商品名は“触らんラップ”です。 業務用、個人用にハイスペックな商品として高価格で販売します。 |
本商品を販売して2年が経過しました。
順調な売上で3年目もそれなりの収益が期待できそうです(下図)。
そのような中、自社商品を購入してくれたお客さんから、あるECサイトで同じ名前の商品が売っていると知らせがありました(下図)。
ただの食品ラップに何の工夫もなく“触らんラップ”と名前を付けているだけの商品のようです。
普通の食品ラップ同様の価格で売っています。
日本の消費者向けに売っています。
これを見た消費者は、真の“触らんラップ”の低価格バージョンが出たと勘違いして購入するかもしれません。
このままでは売上が下がるばかりか、衛生面に気を遣う事業者用、高級志向の奥様用に高級志向で売っていこうとするブランドイメージに傷がついてしまいます。
何とかしなければなりません。
商標権を取得している“触らんラップ”の名称を紙製のラップフィルムケースに無断で貼り付け販売する行為は商標権侵害に該当します(参考:下の条文)。
(商標法の条文:侵害とみなす行為)
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
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今回は商標の模倣でしたのですぐに侵害の判断ができましたが、技術やデザインの模倣であった場合は模倣品を入手し、権利侵害に該当するのかどうか慎重に検討する必要があるでしょう。
なお、インターネット上での模倣被害は商標が最も多いというデータがあります(下グラフ:2015年度模倣被害調査報告書 図1.3-7(2016年3月)特許庁)。
模倣品を見つけた場合の対応としてまず頭に浮かぶのが、
・販売者を特定し通報・警告
することです。
ただ模倣品を販売する相手が必ずしも素直に従うとは限りませんし、販売者が海外にいる場合は手が出せません。
このようなECサイトを介した取引で最も効果があると考えられるのが、
・ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)への相談
です。
つまりECサイト運営事業者にこの権利侵害商品を通報することです。
近年、ECサイト運営事業者が出品者の権利侵害によって訴えられるなどの事例もでており(過去記事「ウェブサイトと知財の留意点」で紹介した“チュッパチャプス事件”など)、ECサイト運営事業者の権利侵害品に対する動きは強化されているように感じます。
この対応の効果についてはデータがあります(下グラフ:2015年度模倣被害調査報告書 図1.3-10(2016年3月)特許庁)。
上グラフの各項目はそのままインターネット上で模倣被害を発見した場合の対策になるものですのでかなり参考になると思います。