今では多くの企業に知れわたっているSDGsという言葉。
SDGsを意識した製品開発やSDGsそのものをビジネスのネタとする動きも盛んになってきました。
私の身近な企業の製品開発やサービス展開にもそうした動きが見られます。
<SDGsとは> 2015年9⽉25日、ニューヨークの国連本部で開催された国連サミットの中で決められた国際社会共通の目標(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))の略称。 |
そのような中でこの「SDGs」を含む文字等についての商標登録出願がかなりあるようです。はたして登録されるのでしょうか?
調べてみたところ、本記事作成時点でヒットしたのが123件、いずれも国連サミット後に出願され、そのうち17件が登録されています。以下ご参考(指定商品、指定役務等省略)。
<登録商標の例>
「SDGs総研」
「SDGs絵日記 」
「SDGsJC電力 」
「SDGs経営士」など
一方、現在審査中の商標に対しては次々に拒絶理由通知書が出されています。
<審査中(本記事作成時)の商標の例>
「SDGs電力」
「SDGs見つけ隊、育て隊、広め隊 」
「SDGsビジネスマイスター総合検定」
「SDGsコミュニケーター」など
そして、審査中の出願の多くに共通している拒絶理由が、商標法第4条第1項第6号(国、地方公共団体等の著名な標章)違反です。
商標法第4条第1項第6号は、国、地方公共団体等の著名な標章を一私人に独占させるのは好ましくないという趣旨の規定です。
現在、SDGsは国連で採択された目標の略称として取引者等の間で広く知られています。
拒絶理由通知はこうした状況を反映しているのでしょう。
ただ、ここで疑問があります。
なぜ先の17件は登録されたのか?
上記、登録商標と審査中の商標そのものに登録の可否を分けるような目立った違いは見当たりません。
考えられる違いとしては査定のタイミングが挙げられます。
審査における登録可否の判断基準時は原則、査定時です。
そうすると、早期に出願された商標については査定時にはSDGsがまだ著名でないから商標法第4条第1項6号には該当せず登録、遅れて出願された商標については既にSDGsが著名になっているから拒絶、ということかもしれません。
SDGsという言葉が世間に出てきたのは(おそらく)国連採択の2015年9月です。2017年にはシンポジウムやセミナーが開催されはじめています。個人的には、2018年には多くの企業がSDGsに関心を持ち、実践し始めたと感じます。
一方、SDGsを用いた商標登録出願の中には2019年や2020年に登録されたものもあります。
はたしてどのタイミングでSDGsが国、地方公共団体等の著名な標章になったと判断されたのでしょうか?
ただ、審査結果を全体的に見ていると、どのタイミングだったとしても納得感が薄いです。反論等の行方を見守るしかないですかね。
まあ、現在ではSDGsは国連で採択された目標の略称だと多くの取引者が想起するレベルだと言えるのではないでしょうか。そのような中でこれを用いた名称を独占しようとすることは上記規定の趣旨に反する(拒絶理由に該当するのは仕方がない)とも解釈できます。
長期的には、あふれかえったSDGsの文字ににこだわるよりも、独自ネーミングにこだわった方がブランディングにつながると考えることもできます。
どうしてもSDGsを商標的に使いたければ、SDGs以外の文字等で商標権を取得してSDGsをその商標の枕詞的に使う(これならSDGsブームが終わり、次のブームがやってきても、同じ手で登録商標を活用可能!)とか、いろいろ手はありそう。「SDGs」の文字そのものは使用禁止なわけではないですからね。