前回、米国クラウドファンディングのキックスターターの日本版ができるということで、国内クラウドファンディングと比較してみました。
現行の国内クラウドファンディングよりも高額調達できるのかなど、現時点ではよくわからないことが多いです。
一方で、資金調達先が海外まで広がるということになると、知的財産権のことが懸念事項として挙げられます。
そこで知的財産リスクについて懸念事項を整理してみます。
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資金調達し、支援者にリターン品を届けるという典型的な購入型クラウドファンディングについて考えます。
プロジェクト起案者(資金調達したい人)とプロジェクト支援者(支援金を払う人)の居住地から次の4パターンがあります。
起案者 | |||
国内 | 海外 | ||
支援者 | 国内 | ① | ③ |
海外 | ② | ④ |
上記①は国内で完結する従来的なクラウドファンディングです。
上記③及び④は現在、海外で展開しているクラウドファンディングです(今回はこれは無視します)。
上記②は起案者が国内、支援者が海外。キックスターターのような海外のクラウドファンディングプラットフォーム運営事業者が日本上陸した場合に出てくるであろう新たなパターンです(下イメージ図)。
上記①のケース(起案者、支援者ともに国内)
この場合、東京と北海道で取引(支援金とリターン品のやりとり)をしようが、東京と九州で取引をしようが問題になるのは国内法です。
基本的に国内の特許法や商標法など気をつけていれば問題にはなりません。
これまでの記事で知財リスクと対策について説明してきた通りです。
上記②のケース(起案者国内、支援者海外)
この場合は支援者居住国の法律にも気をつけなければなりません。
インターネットを通じた取引とはいえ、相手国内で商売をしているのと変わりはありませんので。
以上をざっくりと整理すると、
日本の法律 | 関係国の法律 | |
起案者、支援者ともに国内 | 〇 | - |
起案者国内、支援者海外 | 〇 | 〇 |
ということになります。
特許権や商標権は国ごとに別個独立して存在し得ます。
例えば、プロジェクトに関する商品名について日本で商標権を取得していたとしても、その商標権は国内限定の権利です。
資金提供者の居住国で同じ種類の商品に同一又は類似する名称の商標権が取られれていること(このままだとその国の商標権を侵害してしまうこと)もあり得る話です。
(つづく)