ブログと著作権(その7):企業名や商品名

2017.06.09

 前回、音楽とJASRACについて取り上げました。

<過去記事>
ブログと著作権(その1)
ブログと著作権(その2):漫画の引用
ブログと著作権(その3):写真の引用
ブログと著作権(その4):自撮り写真
ブログと著作権(その5):文章の問題
・ブログと著作権(その6):音楽とJASRAC

 今回は企業名や商品名について取り上げます。

 何も考えずにブログに企業や商品名を気軽に載せた場合、何か問題が生じるのでしょうか?

 文章や商品名などとともに“©”や“®”といった丸囲みされた謎の文字がコバンザメのようにくっついていることがありますが、気になったことはありませんか?

 今回の問題は著作権だけでなく“商標権”も考えなければなりません。

 著作権と商標権で分けて考えます。

1.著作権との関係から

 著作権というのは文章や音楽、写真、イラストなどの“著作物”を創作した瞬間に、その著作物作者に自動的に発生します。

 赤の他人がその著作物を無断でブログに掲載した場合、“公衆送信権”など著作権侵害になってしまいます。

 これまでの記事でも触れた通り、以下の場合は著作権侵害になりません。

1.著作権が切れている場合

2.権利者から許諾(や著作物を譲渡)してもらった場合、著作権が放棄されている場合

3.引用などの例外規定に該当する場合

 上枠1~3の話は今回は横に置いておきます。

 著作権侵害が成立するのは、そもそも対象物が“著作物”の場合です。

 “著作物”とは何か?

 著作権法では以下のように明記されています。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 「思想又は感情を創作的に表現」したものであればレベルの高低は関係なしに著作物だと言えます。

 幼稚園児が描いた絵であっても著作物です。

 だったら世の中のほとんどのもの著作物になるんじゃないのか?と思うかもしれませんが、そうでもありません。

 例えば、以下の文章について著作物性を否定した裁判例があります。

 
<裁判所の判断の抜粋>
日頃よく用いられる表現ありふれた言い回しにとどまっているものと認められ、これらの記事に創作性を認めることはできない”
(事件番号 平成6(ワ)9532 )

 一方で、5・7・5の俳句はたった17文字しかありませんが著作物だと言えます。

 著作物かどうかの判断は意外に難しいのです。

 また、企業のロゴマークについて著作物性が否定された裁判があります。

 
 この裁判は被告が原告に類似する文字デザインで事業を行っていたことが原因になっています。
<裁判所の判断>
“文字は万人共有の文化的財産ともいうべきものであり、また、本来的には情報伝達という実用的機能を有するものであるから、文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは、一般的には困難であると考えられる。仮に、デザイン書体に著作物性を認め得る場合があるとしても、それは、当該書体のデザイン的要素が「美術」の著作物と同視し得るような美的創作性を感得できる場合に限られることは当然である”(事件番号 平成6(ネ)1470 )

 上記裁判所の判断のように通常、

 企業名やロゴマーク、商品名が著作物だと認められるためのハードルは高い

 と考えられます。

 つまり、

 企業名や商品名をブログに書いたからと言って、それが著作権侵害に該当するケースは稀

 だと考えられます。

 ただし、これは著作権との関係での話です。

 商売目的で企業名や商品名を勝手に使うとトラブルの元になります。

 特に“商標権”は留意すべき権利の一つです。

2.商標権との関係から

 “商標”とは自分の商品やサービスに付して他人の商品やサービスと区別するものです

 自社名や商品名、ロゴマークなど“これは〇〇社の商品”と見た人が識別できるものは商標になり得ます(下イメージ:特許庁HPhttps://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/chizai08.htmより)。

 

 商標を他人に使わせないためには、特許庁に事業を行う商品やサービスを指定して商標登録出願をする必要があります。

 他に類似する登録商標がないなど、拒絶理由がなければ商標登録されます。

 こうして得られる権利が“商標権”です。

 商品名などとともに表示されることが多い®のマークは「商標登録されています」ということを表すものです(一方、©は著作権を示すマークです)。

 商標権を取得することで出願の際に指定した商品やサービスを基準に、類似する範囲まで他人の使用(無断で商品に商品名を付けたり、そうした商品を販売したりする行為)を禁止できます(下図)

 

 多くの社名や商品名には商標権が取得されています。

 ではブログに“WALKMAN”や“アリナミン”など登録商標の文字を書けないのか?

 通常、そうした文字を書いただけでは商標権侵害にはなりません

 既述した通り、商標は他人の商品やサービスと区別するためのものです。

 ブログに登録商標の文字が記載されてあっても商標的な使い方ではありません。

 商標権が禁止されるのは上図の赤色部分に該当する行為、例えば「電子通信機械器具」に“WALKMAN”の文字を付してネット販売するような場合です(“WALKMAN”は電子通信機械器具を指定して商標登録されています)。

 ブログ上で販売する商品がある場合、広告の商品などとともに無関係の商品名を紛らわしい形で用いると(例えば、関係のない有名ブランド名を広告商品の近くに表示して、閲覧者が広告品がそのブランド品であるかのように誤解する場合)商標権侵害になり得ますので注意してください。

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