ブログと著作権(その2):漫画の引用

2017.05.27

 前回「ブログと著作権(その1)」で自由に他人の著作物を利用できる場合を3つ挙げました(下枠)。

1.著作権が切れている場合

2.権利者から許諾(や著作物を譲渡)してもらった場合、著作権が放棄されている場合

3.引用などの例外規定に該当する場合

 上記1と2の場合は大手を振って著作物をブログに載せることができますが、微妙なのが上記3の場合です。

 これまで“引用”については何度も取り上げてきました。

 そもそも“引用”とは何なのか?

ですが、言葉の意味を説明しているものがなかなか見つかりません。

 文化庁は“引用”のルール的なものを公表していますが(これを守れば引用である、みたいな)、引用という言葉の意味はスルーしています(以下)。

文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/outline/8.h.html

 これが判例から導き出された“引用”の解釈だということでしょうが、いきなり引用のルール的なものをポンと示されても、法律と無縁な生活を送ってきた人たちにとっては頭が痛いだけかもしれません(?)。

 引用について説明しているものをいくつか挙げます。

人の言葉や文章を、自分の話や文の中に引いて用いること
(デジタル大辞泉)

紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録すること
(「パロディ写真」事件の最高裁判決)

“「引用」とは、例えば自説を補強するために自分の論文の中に他人の文章を掲載しそれを解説する場合のこと”
(文化庁)(先に「文化庁が引用という言葉の意味はスルー」と言いましたが一応、説明はありました)

「引用」とは、例えば論文執筆の際、自説を補強するため、他人の論文の一部分をひいてきたりするなどして、自分の著作物の中に他人の著作物を利用すること
(公益社団法人著作権情報センター)

 イメージ的にはブログで他人の著作物が必要になった場合に一部引いてくる(拝借する)ということになるでしょう。

 法的には、引用は(要件を満たしているのならあらゆる場合に認められます

 著作権法において引用に制限を設けた規定(例えば音楽はダメよ、とか)はありません(下枠参照)。 

(著作権法条文:引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 従って

漫画であっても引用できる

というのが結論です。

 以前の記事でも紹介しましたが、こうした絵の著作物について引用を肯定した裁判例があります(下枠)。

脱ゴーマニズム宣言事件(事件番号 平成9(ワ)27869 東京地裁平成11年8月31日判決)


(裁判所資料:最高裁HPより)

 この裁判は、元々の作品である『ゴーマニズム宣言』の絵の一コマを引用し、これを一部改変(下の人物の目の部分を黒塗り)したことが同一性保持権という権利を侵害するというのが原告請求理由の一つになっていたものですが、
 判決の中で裁判所は
絵を引用している例も多数存することが認められるのであるから、漫画によって示された主張を批評する場合に、絵を引用することなく批評するのが一般的であるとか、そのような慣行が成立していると認めることもできない
と上記絵の引用を肯定しています。

 ただ、漫画の絵も使っていいんだ、と安心はできません。

 一番大きな問題が

引用としての法的要件を満たしていること

です。

 先ほどの引用に関する条文をもう一度示します。

(引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 まず“公表された著作物”でなければなりません。

 従って月曜日発売の週刊少年ジャンプを前の週にどこからか仕入れて、ブログにアップすることは許されません。

 次に“公正な慣行に合致”と“引用の目的上正当な範囲内”であるという、何だかよくわからない要件を満たさなければなりません。

 これらがどういうことなのかは最高裁判決(写真パロディ事件第1次上告審 昭和55.3.28)などの多くの裁判によって実務的な判断基準ができています。

 それが以下の3要件です。

[1] 主従関係:引用する側とされる側の双方は、質的量的に主従の関係であること
[2] 明瞭区分性両者が明確に区分されていること
[3] 必然性なぜ、それを引用しなければならないのかの必然性

 例えば、

漫画のネタバレが目的になっているもの(質的に漫画が主になっているもの)

もっともらしい文章が書かれてあるが、漫画が全編公開されているもの(量的に漫画が主になっているもの)

は上記“主従関係”を満たさないと言えます。

自作の絵と漫画の絵を融合させているもの(引用する漫画と自分の絵が区分されていないもの)

は上記“明瞭区分性”を満たさないと言えます。

批評目的とかでなく閲覧数アップという目的のために何の脈絡もなく漫画のコマを載せているもの(引用する理由がないもの)

は上記“必然性”を満たさないと言えます。

 また、引用した場合は“出所を明示”しなければなりません。

 出所の明示について法的なルールは示されていませんが、文化庁HPに以下のコメントがあります。

著作権なるほど質問箱(文化庁)から抜粋
“それぞれのケースに応じて合理的と認められる方法・程度によって行われなければいけないとされていますが、引用部分を明確化するとともに、引用した著作物の題名著作者名などが読者・視聴者等が容易に分かるようにする必要があると思われます。”   
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000305

 漫画の単行本であれば“タイトル”、“著作者名”、“出版社”、“巻数”、“ページ数”まで記しておけば閲覧者は容易に分かるでしょう。

 あと、気をつけておかなければないない点として

引用物を加工しないこと

が挙げられます。

 上記ゴーマニズム宣言事件はまさにこの点が争われました。

 著作者の権利の一つに“同一性保持権”というものがあります(参考:下枠)。

(著作権法条文:同一性保持権)
第二十条  著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

 作者の意に反して漫画を勝手に加工したり、新しい物語を設定したりすることができないということです。

 この同一性保持権を根拠にした紛争は多いですので注意してください(ゆるキャラの“ひこにゃん”の争いもこの権利が元になっています)。

 また、気をつけておきたい点としてもう一つ

 最近、インターネットで自由に閲覧できる漫画が増えてきました。

 例えば、“となりのヤングジャンプ”では「ワンパンマン」などの人気漫画を登録なしで無料で読むことができます。

 ただし、無料で読めるからといって著作権フリーとは限りません。

 従って考え方は上記事項と同じです。

 結局、漫画は引用しても大丈夫なのか?

という疑問があるかもしれません。

 適法な引用であっても著作者や権利管理者の怒りを買って訴えられることはあるかもしれません。

 訴訟で負けないことと訴えられないことは別問題です。

 結局、リスクが大きいか小さいかを自分で判断するしかないのでしょうね(ブログ保険なるものを作ったら売れるのでは?)。

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