事例で見るクラウドファンディングの流れと留意点

2017.04.28

 前回記事にてクラウドファンディングの流れと留意点を解説しました。

 そこで今回は実際の試作品に基づき、より具体的に見ていきたいと思います。まず、以下の試作品を見てください。都内のある発明家が作ったものです。

 内部にラップフィルムが入っています。サ〇ンラップを入れるケースだと思ってください。
 なぜこのようなモノを作ったのか?ですが、

・手をケガしたときや片手がふさがっているときに一方の手だけで簡単に切れるものがあったらいい(写真にはありませんが、当該ラップフィルムケースには別に固定部品があり、壁などにピタッと設置することができます)

・その際、刃でケガをしない工夫が施されていたらさらにいい

という想いが出発点になっています。

 通常は刃がケース内におさまっていて、下の写真のように真ん中のスイッチのようなものを押すと刃が飛び出してきます。
 全て片手の操作ででき、刃を飛び出した状態に維持させ続けることもできます。
 写真では見えづらいですが、刃の中央部にフィルムがちょっとだけ顔をみせていて、その部分をさっとすくい取ることができます。

 例えば、料理中に片手がふさがっているとき、清潔さを求められる業務でフィルムケースを手に持てないというとき、などに冷蔵や壁に設置されたこのフィルムケースなら最小限の労力清潔を保ちつつラップフィルムを取り出せます。

 ローテク風に見えますが、フィルムにかかる圧力の調整などに知恵が込められています(既に特許権が取得されているのでこうして堂々と見せることができます)。ただし、デザインは確定していません。

 さあ、上の写真のように試作品はできましたが、事業化するために金型費500万円が足りません。
 銀行からの融資は期待できないのでクラウドファンディングで集めたいと考えています。

 前回記事でもお見せしたクラウドファンディングの簡単な流れ図を示します。

 

 順にお話します。

1.起案段階

 すでに試作品はできています。まず最初の悩みにぶちあたります。

Q.どの事業者のプラットフォームにすべきか?

 以前の記事「クラウドファンディングとは」で紹介し通り“クラウドファンディング”と言っても様々なタイプがあります。

 正直、応援者から対価なしの寄付型を使って資金提供してもらいたいところですが見ず知らずの個人事業につきあってくれる人はそうおらず無理でしょう。応援者に資金提供の対価(リターン品)を渡す購入型になりそうです。

 朝日新聞のA-portだと新聞広告力を活用できるかもしれませんし、手数料のことを考えると大手の一つであるCAMPFIREという選択肢もありそうです。ビジネス系に強いMakuakeもいいかもしれません。今回この検討は割愛します。

 ここでは仲介手数料が20%の架空のプットフォームということにしましょう。この仲介料を踏まえて次の悩みが浮かんできます。

Q.リターン品に何を用意すべきか?

 世界一周したいなどの個人的なプロジェクトの場合、資金提供の対価に“お礼メール”とか“記念Tシャツ”とか“旅の報告”といったお金がかからないものがリターン品として設定されることが多いです。

 ただ今回はモノ作りというビジネスプロジェクトです。一口千円、とか1万円という支援金の対価にお礼メールやTシャツを設定しても誰にも見向きされないだろうと容易に想像できます。

 やはり今回のラップフィルムケースの事業化に共感してくれる人はこのラップフィルムケースを使ってみたいと思う人でしょう。

 であればリターン品をこのラップフィルムケース完成品にするのが理にかなっています。もし支援者が少なかったとしたらこの商品の需要がないのか、さらに改良しなければ売れないのだ、と受け止めることもできます。

 リターン品はラップフィルムケースということにします。次の悩みどころがリターン品の設定金額です。

Q.リターン品(プロダクト)をいくらに設定すればいいのか?

 考え方として例えば、想定販売価格にし市場性を占う、金型費を調達するため多少上乗せした金額設定にする、ことが挙げられます。

 最近はクラウドファンディングで成功した(応援者が多くあらわれた)プロジェクトに金融機関が融資する取組みもでてきました。
 場合によってはそうした仕組みを活用し得るかも検討事項になり得るでしょう。

 本アイデア品の発明家はこのラップフィルムケースを業務用、あるいはキッチンを彩る高級品にしようと考えています。

 一個5,000円でどうでしょうか?(サ〇ンラップ愛用者からすると「マジかよ」と感じるかもしれませんが、ここではそうした突っ込みはいれないでください)

 ここで考えなければならないのが仲介料その他費用です。

 一口5,000円の資金提供があったとして仲介料20%を差し引くと残りは4,000円です。

 さらに応援してくれた人(資金提供者)へのリターン品送料も念頭に入れておかねばなりません。

 10cm✖10cm✖30cmで200gの配送物の税込送料を確認したところ次の通りでした。

送り先 定形外郵便物 ゆうパック 宅急便
都内 250円 690円 756円
愛知 250円 740円 756円
大阪 250円 840円 864円
福岡 250円 1170円 1188円
沖縄 250円 1290円 1296円

 定形外郵便物で送るのであれば大きな費用にはなりませんが、それ以外だと平均で1,000円程度はみておいた方がいいかもしれません(かなり大きな費用になります)。

 また、応援者が数百人、数千人とあらわれた場合、一人で発送作業を行うのはかなりの手間です。

 発送遅れはトラブルにもなりかねませんのでスケジューリングが重要になりそうです(この点、リターン品をネット介しダウンロードできるようなものだと楽になりますね)。

 発送関係の経費が1,000円だとすると先ほどの4,000円から差引いて自由になるお金は3,000円ということになります。

 500万円の金型費を集めるためには500万円÷3000円=1,667人(目標金額は1,667人✖5,000円=834万円)の応援が必要ということになります。なかなか道は険しそうですがやってみましょう。

 事業者用には10個、50個、100個をまとめて一口5万円、25万円、50万円というコースを用意するのもいいかもしれません。

 リターン品について
 リターン品の設定はいろいろと工夫する余地があるのではないかと思っています。例えば製造する権利販売する権利(特許法で言うところの通常実施権や専用実施権)をリターン品に設定すれば販売代理店を探す手間も省けますし、発送費用はかからなくなります。
 店舗開店系のプロジェクトでは会員権や食事権(券)をリターン品として設定しているケースがよく見られます。まさに権利をリターンにした例だと言えます。

 

2.相談段階

 さあ、クラウドファンディング運営事業者にアポをとって相談します。

 運営事業者が見るポイントは本気度、つまりその挑戦をやり遂げる力があるか(冷やかしでないか、技術的能力があるのか、など)です。

 それを示すためには相当の実績がある企業ならまだしも個人事業レベルでは試作品ぐらいないと話になりません。
 今回、この点では問題ないと言えます。

 ちなみに運営事業者がこうした相談者をどこまでチェックするのかはマチマチです。

 怪しくなさそうという程度でOKなところもあれば(調べようがありませんから)、起案したプロジェクト公開後に利用できるネットワーク(人脈)を有しているかまで確認をとるところもあります。

 それが売れそうかどうかという判断は基本的にしないでしょう。

 それが売れる、売れないの判断は購入者(クラウドファンディングではプラットフォーム上に公開されたプロジェクトを見た人)にかかっています。誰にもわかりません。

 <相談担当者
 若い人が多いです。そもそもクラウドファディングという事業が若いですので、基本的にどこも平均年齢は若い(20代のところも多い)です。
 ちなみに私(管理人)がMakuakeを運営するクラウドファンディング・サイバーエージェントの社員向けに内部勉強会をやったときに参加した人たちは大半が20代女性のように感じました。

 

3.準備段階

 採択されると次は準備に取り掛からなければなりません。

 文章を書いたり、写真動画を貼り付けたりする作業は自分でやるか、誰かに頼むしかありません。

 運営事業者(相談窓口の担当者)はアドバスをしてくれますが、こうした作業自体を手伝ってくれません

 これがクラウドファンディング初挑戦者に最も多い誤解であるような気がします。

 入力作業はパソコンを使ってプラットフォームの管理画面からやります。感覚としてはフェイスブックやブログの記事を書くようなものです。

 会員登録して管理画面に入ることもできないぐらいパソコンが苦手な人は誰か協力者が必須でしょう。

 公開準備のためにどのような情報が必要になるのか以下に整理しました。

プロジェクト名 プロジェクトのコンセプトをあらわしたタイトルを考える必要があります。
プロジェクトの概要と詳細 読んだ人に伝わる文章気持ちを引き付ける動画、写真などが必要です。
カテゴリ 例えば“プロダクト”とか“ファッション”など運営事業者が設定したカテゴリを選択します。プラットフォームではこれに従ってカテゴライズされますのでプロジェクトに適したカテゴリを選ぶ必要があります。
目標金額 目標金額達成しなければ1円も手にできない「オールオアナッシング」方式の場合は高すぎる金額設定にならないようにしなければなりません。
プロジェクト開始・終了日 多くのプロジェクトの募集期間は2~3カ月です。
リターン品 内容数量上限設定一口金額届出予定日などを記載します。
起案者情報 住所、口座番号など非公開情報です。

 公開資料の準備にあたってポイントとなりそうな点を列挙します。

①プロジェクトのシナリオとリターン品の一貫性
 今回はラップフィルムケースと作りたいということが動機ですので、プロジェクト名、プロジェクトの概要や詳細はそうした想いを表現するものになります。

 その想いに共感し応援(資金提供)してくれる人はどのような人かというと、今回のラップフィルムケースが商品化したら購入したいと感じる人だと言えます。

 従って、そうした応援者に対するリターン品は完成したラップフィルムケースだということになります。リターン品に“お礼メール”や“記念Tシャツ”を設定してもうまくはいかないでしょう。

 店舗開業プロジェクトの場合、“会員権”や“食事権”をリターン品として設定するケースが多いということは上述しました。これもその店が開店したら行ってみたいと共感を誘うシナリオに沿ったリターン設定だと言えます。

 寄付型クラウドファンディングであればこうした問題はありませんが、購入型クラウドファンディングというのはリターン品という対価で成り立つビジネスチックなものです。

 なぜそのプロジェクトを立ち上げたのかという目的からリターン品までの一貫性が重要になります。

②募集期間
 募集期間を長くすればより多くのお金が集まるような気がしますがそうでもありません。

 火がついたもので募集期間終了間際まで天井知らずに支援金が集まるものもありますが、時とともに頭打ちになるもの(クラウドファンディング利用人口はまだそう多くはないでしょうから仕方がないことかもしれません)、最初から最後まで低空飛行を続けるものなど様々です。

 ある程度支援が得られてプロジェクトに良い感触を得たというのであれば、クラウドファンディングによるお金集めはそこそこで切り上げるという考え方もあります(集まったお金は漏れなく仲介手数料を取られますし、リターン品発送の手間暇もかかりますので、さっさと事業化の方を進めた方が得かもしれません)。

 これはあくまで印象ですが、プロジェクトの成否は公開間もない時期、長くても1か月あれば大体予想がつく気がします。

 参考までに支援金の集まり具合の一例を挙げます。
 
 青天井タイプ
 
 頭打ちタイプ
 
 低空飛行タイプ

③動画の要否
 現在、多くのプラットフォームがプロジェクト紹介のページに動画をのせています。画像の品質も素人レベルとは思えないものも多いです。

 (ただ、最近のプロジェクトは海外からの輸入品紹介が多く、そうしたものは現地法人が作ったぽい感じの動画も多いですね)。

 動画があると見る側にはより多くの情報が伝わり共感安心感につながります。

 動画の有無はプロジェクト成功率に少なからず影響はあるでしょう。

 ただ起案者側からするとこの動画が一つの壁でもあります。自分で作ろうと思ってもそのような技術がない、業者に頼んだら余計な費用が発生すると頭に浮かんでくるのではないでしょうか?

 この点については閲覧者目線で考えると答えがでてくるかもしれません。

 プロジェクト閲覧者に伝わる心に響くものになっているかで判断し、動画があろうがなかろうがその差がなければ動画は必要ないでしょうし、動画があった方がより良くなるというのであれば動画は必要でしょう。

 今回のラップフィルムケースは片手でいかに楽ににラップが切れるか、いかに衛生面を維持できるかを伝えることがプロジェクト成否のカギになるかもしれませんので動画は必要だと考えます。

 それに販売促進資料を作っていると考えることもできますし(何もクラウドファンディングだけにしか使えないわけではありません)。

 なお動画がなくても成功してるプロジェクトはたくさんあります。一部のせておきます。これらを見ていると必ずしも動画は必要ではないとも感じます。
   


 
 
 
 
 

⑤「オールイン」か「オールオアナッシング」か
 
目標金額未達であっても応援者からの支援金を手にできる「オールイン」方式、目標金額達成時のみ支援金を手にできる「オールオアナッシング」方式のいずれにするかという問題があります(後者のみしか認めていない運営事業者の場合はこうした問題はありませんが)。

 両方の方式を用意しているどの事業者もオールイン方式の方が多いとのことです。

 せっかくの支援金ですのでいただきたくなるのが心情です。
 ただオールイン方式だと支援者にリターン品を届ける義務を負ってしまいます。

 例えば今回のラップフィルムに関するプロジェクトの支援者が50人(25万円分)いたとすると、プラットフォームで約束した届出日までに50個のラップフィルムケースを作り発送しなければならくなります。

 支援金25万円では金型費500万円(目標金額834万円)には程遠いですね。

 さあ金型どうしよう?

 となりますよね。へたに量産体制を作ってしまったら待っているのは地獄かもしれません。

 こうした心配があるので今回の案件はオールオアナッシングの方が適しているかもしれません。

 各方式のメリットデメリットを以下に整理しました。

  オールオアナッシング オールイン
メリット 目標金額未達の場合はリターン義務を負わない 目標金額未達の場合でも支援金を手にできる
デメリット 目標金額未達の場合は支援金を手にできない 目標金額未達の場合でもリターン義務を負う
活用イメージ テストマーケティング的に考えている場合(反応が悪ければプロジェクト中断しても構わない場合 そのプロジェクトに係る事業中断という選択肢はない場合

 こうした資料準備と並行してやらなけれいけないことに応援者づくりがあります。家族や親せき、友人、知人などの協力が必要です。選挙っぽいです。

「インターネットで公開して多くの人に情報を発信し、資金を集めるのがクラウドファンディングなのではないか?」

「自分の知り合いに資金提供をお願いするのは本末転倒ではないか?」

という声が聞こえてきそうですね。
 ただ、いくらインターネットを使った仕組みだと言っても、どこの誰かもわからない人に資金提供者は簡単にあらわれません。現実世界と変わらないのです。

  プラットフォームに公開されているプロジェクトの中には公開から数十日経つのに支援者0人、資金提供額0円というものもあります。

 そうしたプロジェクトの内容に共感したとして“応援する”というボタンを押してお金を払う気になるでしょうか?やはりお金を出すならある程度支援者がいるプロジェクトの方が安心します。

 ミョウバンの塊を大きくしていくには芯となる部分が必要なように、クラウドファンディングでもプロジェクト支援者を増やしていくにはコアとなる仲間が必要です。

 そうした仲間の口コミ効果、プロジェクトのロケットスタート感の演出は必要なのです。そのプロジェクトに合致した層にアクセスを持つ人がメンバーにいるかも成否要因になりますね。

4.公開段階 

 応援者を募り資金を集めるために公開するのですが、公開とは様々なリスクを伴います。

 特に知的財産権(著作権、特許権、意匠権、商標権など)を侵害したとか、公開したことで模倣されたとか、権利を取得できなくなってしまったとか・・・。

 ただ、こうした権利侵害の問題、模倣の問題はクラウドファンディング限定の問題ではありません(従って一般的な留意点や対策は別記事で触れます)。

 公開に伴うリスクのポイントだけ列挙します。

(1)他人の文章、写真、動画など著作物を公開する行為
 多くの場合、他人の著作物を個人的に使用する分には問題ありませんがプラットフォーム上で公開する行為はこの範疇を超えています。著作権侵害を指摘される可能性があります。

 最近では例えば医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の記事転用問題が騒がれました(参考記事:YOMIURI ONLINE)。
 

www.yomiuri.co.jp
 
ページが見つかりませんでした : 読売新聞オンライン
http://www.yomiuri.co.jp/science/goshinjyutsu/20161212-OYT8T50096.html

 IT社会となり情報検索範囲がおそろくし広がった昨今、誰が目を光らせているかわかりません。東京オリンピックのロゴ問題もよくまあと思うほど類似著作物が次から次へと出てきました。誰が調べているんでしょうかね?

 他人の文章や写真を“引用”(意訳すると、例えば自分の文章中で他人の文章や写真などが必要になり、その他人の文章や写真の一部を取り入れること)することは著作権法で認められていますが(著作権法32条)、どこまで許されるのかという判断は専門家でも難しい場合が多いです。

 一方、その文章が誰の著作物にも依存せず独自につくられたものなら著作権侵害の問題はありません。

 どんなに似たものが存在しようが独自創作物には著作権が別個(何の手続きをすることもなく自動的に)発生するからです。

 ただし、それが元になる文章があってそれを少し変えてみただけ、とかパロディ化したというものは許されません。何物にも依存せず自力で作ったということが必要なのです。

 今回のプロジェクトで動画作成を専門業者に依頼する場合、その動画の著作権その専門業者に発生します。

 従って公開後も動画を自由に使っていくためにはきっちり権利を譲受けておかねばなりません(また、譲渡できない“著作者人格権”というものがありますので、その専門業が著作者人格権という権利を行使しないという約束も必要)。

(2)他人の商標を使用する行為
 本商品を“サ〇ンラップのケース”なんて感じで公開した日には当該ラップ会社から文句がきてもおかしくないです。「紙製包装用容器」について下の商標権が取得されています。

 Q.商標とは何か?

 商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です(下リンク:特許庁HP)。
 

 つまり、商品や商品の包装などに商標登録された商品名や社名をくっつけて消費者がその商品が誰が作ったものなのか容易に判断できるようにするためのものです。

 商標権を取得するためには、
商標を貼り付けようとする商品やサービスを指定して特許庁に出願し
審査をパスする
必要があります。

 通常、指定する商品は自分が販売する商品です。この指定が商標権の範囲を決めます。

 上記商標権の効力が及ぶ商品は「紙製包装用容器」とその類似する商品です(商標権の効力は商品だけでなくサービスにも及びますがここでは説明を割愛します)。

 商標権はあらゆる商品やサービスに効力が及ぶものではないのです。

 従って「紙製包装用容器」と全く関係ない商品、例えば「ゲーム機」とか「パソコン」などに“サランラップ”の名称を貼り付けて販売しても商標権侵害にはなりません(実際に上記商標は様々な商品やサービスを指定して権利が取られていますが)。

 ただ、今回の商品はモロに商標権の効力範囲内ですから要注意です。

<文章中に他人の商標を使う行為>
 商標権が取られている言葉を文章中で使ったからと言って必ずしも商標権侵害になるわけではありません。 
 その文章を見た人が商標権者の商品と誤認する不都合は生じません。従って文章中に他人の商標を書くということは「商標的な使用ではない」ということになります(非侵害)。
 また、今回の商品紹介の文章中に上記商標を使うと、その文章を見た人が誤認混同する可能性があります。
 そのような誤解を招く文章は、まさに他人の商品と区別しようという商標の目的に真っ向からぶつかるものですので使用は避けるべきです。

(3)公開そのもの
 当たり前の話ですが、プラットフォームで公開するということは全世界にその内容が知れわたるのと同じことを意味します。

 そして守秘義務のない人に知られてしまった技術内容やデザインは原則、特許権や意匠権を取得することができなくなってしまいます。

 詳細は別記事にしますが公開されてしまうことで取得できなくなる権利を以下にまとめました。 

権利 どんなものに発生する権利か 公開されると原則どうなるか 備考
特許権 技術 権利化不可  
実用新案権 技術 権利化不可  
意匠権 デザイン 権利化不可  
商標権 名称、マークなど 影響なし 第三者に先取りされるリスクあり
著作権 文章、音楽、絵、写真などの創作物 影響なし 著作権は創作時に自動発生

5.お返し段階

 目標金額を達成し、事業化に向けて準備を進めることになりました。

 これは同時に応援者に対して約束した日までにリターン品を届ける義務を負ったことを意味します。

 前回記事でも申し上げたようにリターン品が届かないというのがクラウドファンディングにおける最大の懸念事項(応援者、運営事業者にとっての懸念事項)だと言えます。応援者にお返しができなかった場合のための保険があるくらいです。

 また納期遅延もクレームの原因となります。

 お金を払った人は常にプロジェクトのその後を見ています。こうした応援者の不安を少しでも軽減するため、経過報告(開発進捗状況などの報告)を怠らないようにしなければなりません。

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